米政府がベネズエラ最高裁長官逮捕に懸賞金500万ドル

 マイク・ポンペオ米国務長官は7月21日、ベネズエラ(VEN)のマイケル・モレーノ最高裁長官逮捕に賞金500万ドルを懸けると発表した。米政府は今年3月、ニコラース・マドゥーロVEN大統領逮捕(もしくは暗殺)に1500万ドルを懸けた。

 今回、モレーノ長官に賞金を懸けたのには理由がある。昨年4月30日、米国が「暫定大統領」に擁立した傀儡政治家フアン・グアイドーVEN国会議長は軍事クーデターを打ち、完全に失敗した。米政府は昨年3月ごろから極秘裏にモレーノ長官と交渉、長官がマドゥーロ政権の合法性の根拠となっている制憲議会(ANC)を「違憲」と宣言するよう要請した。

 長官が「違憲」を宣言すれば、VEN国軍が蜂起する可能性があったと、米政府は見ている。その模様は、ジョン・ボルトン回顧録に記されている。だが、長官は宣言せず、軍部も兵営に留まり、政変は不発に終わった。ポンぺオは「クーデター成功」に懸けていたため、落胆。モレーノは潰すべき敵になった。

 一方、マドゥーロ大統領への賞金が懸けられたのを受けて、米国人2人を含むVEN人、コロンビア人らの傭兵部隊が5月VENに侵攻した。大統領を暗殺し1500万ドルを獲得しようと狙ったのだ。だが上陸時に制圧され、死傷者を出し、約60人が逮捕された。
 
 米国は香港の自由を奪いつつある中国を厳しく批判し、世界各国の人権状況について閻魔帳をつけているが、他方でVENの最高級の要人らの命や身柄に懸賞金を懸けている。他国の政治・人権状況に口を挟む資格はあるまい。

 米ミネア―ポリスでは5月25日、黒人ジョージ・フロイド氏が白人警官に首を脚で圧迫されて殺され、米国全土に反黒人差別、反人種差別の嵐が巻き起こった。それは世界中に波及し、歴史を遡って差別の象徴を糾弾している。コローナ禍のさなか、フロイド氏の命を礎にして奇しくもしくも生まれた偉大な「人道文化革命」である。

 VEN要人に対する暗殺奨励に等しい懸賞金政策を平然として遂行している米政府は、そうした忌まわしい策謀が「人道文化革命」の精神に反することを理解できないようだ。トランプ再選のための画策の一環には違いあるまいが、国務省は堕落したものだ。


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